事前知識の喚起について
新しい学習内容には、圧倒されてしまう生徒もいます。しかしながら、新しく学ぶボキャブラリーや、考え方、概念などであっても、すでに聞き覚えがあり簡単に理解できる生徒もいます。教師は、生徒の事前知識を引き出すことで、未知のものを知る過程を支援することができます。すでに持っている考え、経験、および知識に働きかけることによって、学習を活性化し、生徒が今習っている内容と既に知っている事柄とのギャップを埋められるということが、研究により明らかにされています。
また、教師は生徒の事前知識を活かして指導を有意義なものにできます。多くの研究者 (Peshkin、1992 年;ProtheroeとBarsdate、1992 年;Lee、1992 年)が、生徒の文化的背景をカリキュラムに組み入れることの重要性を強調しています。世界が変化するにしたがい、背景が異なる人々の経験や考えを正しく理解できるようになることが生徒に求められます。カリキュラム、指導、評価を、生徒の経験、言語、文化といった事前知識と結び付けることで、生徒の文化的背景を教育に取り込むことができます。
また、これにより、指導の適切なスタート地点と学習活動の流れが決まります。教育心理学者 David Ausubel は「学習に影響を及ぼす唯一の重要要素は、学習者が何を既に知っているかである」と述べています。
実際の指導で実践する
事前知識の活用は、どのような学年や教科でも行えます。指導というのは、既に知っていることを土台にして理解を手助けし、新しい学習の意味を理解させることなので、事前知識の喚起が指導の適切なスタート地点と言えます(KujawaとHuske、1995 年)。生徒の事前知識を喚起するのは新しい単元や授業に入るときに効果的な方法であり、最初から生徒に能動的に取り組ませるためにも非常によい方法です。学習単元全体を通じてこの事前知識に立ち返ることによって、生徒の学習への積極性と教材の関連性を維持することができます。
カリキュラムの中での例
生徒の事前知識の喚起するのは、口頭で確認することや、きちんとした文章にさせることなど、さまざまな方法があります。以下の例は、どの学年のどのようなカリキュラムでも使用できます。
文章に書く方法
新しい内容について既に知っていることを書くことで、生徒に考えさせる方法。クイック・ライティング、日誌、学習記録などが含まれます。
K-W-L (Know-Wonder-Learn) チャート
(知っていること、知りたいこと、学んだことをチャートに書き留める方法)
生徒の事前知識の活性化、学習目標の設定、単元で得た新たな知識の記録に使用される手法。
思考アクティビティ
事前知識に基づき、予測、アイデアの列挙と格付け、類推をさせることで、生徒の思考を喚起する方法。
ディスカッション
教師と生徒間、およびクラス全体でのディスカッションは、アイデアを共有し、話し合う機会として、生徒の事前知識を活性化します。
参考文献
Kujawa, S., & Huske, L. (1995). The Strategic Teaching and Reading Project guidebook (Rev. ed.). Oak Brook, IL: North Central Regional Educational Laboratory.
Lee, C. D. (1992, February). Literacy, cultural diversity, and instruction. Education and Urban Society, 24(2), 279-291.
Peshkin, A. (1992). The relationship between culture and curriculum: A many fitting thing. In P.W. Jackson (Ed.), Handbook on research on curriculum, (pp. 248-267). New York: Macmillan.
Protheroe, N. J., & Barsdate, K. J. (1992, March). Culturally Sensitive Instruction. Streamlined Seminar, 10(4), 1-4.